消費税 軽減税率制度とは
令和元年10月に、いよいよ消費税率が8パーセントから10パーセントに引き上げられることになります。もっとも、商品の中には、消費税率が8パーセントのまま、消費税率が据え置きになる商品があります。この一部の商品につき、消費税率を8パーセントのまま据え置きとする制度のことを軽減税率制度と言います。
今回は、この軽減税率制度に関して、詳しくご説明致します。
軽減税率の対象商品
軽減税率制度を理解するには、軽減税率の対象商品をまずは理解しなければなりません。
改正された消費税法によれば、軽減税率の対象商品とは、①食品表示法に規定する食品であり、酒税法に規定する酒類を除くもの、②週に2回以上発行され、定期購読されている新聞とされています。
特に、「①食品表示法に規定する食品であり、酒税法に規定する酒類を除くもの」については、該当性の判断が非常に難しいものです。
「食品表示法に規定する食品」とは、人の飲用または食用に供されるものです。一般的な食品であれば、軽減税率の対象になると考えて良いでしょう。
もっとも、「人」の飲用または食用に供されるものなので、例えば、ペットに与えるような食品(猫缶など)は、食品表示法に規定する食品には該当しません。
また、人が食するもの全てが食品表示法に規定する食品に該当するわけではなく、「医薬品」、「医薬部外品」などは、この「食品表示法に規定する食品」には該当しないものとされています。
そのため、例えば、「医薬部外品」(医薬品と化粧品の中間の製品)と明記されたビタミン剤などは、食品表示法に規定する食品ではないため、軽減税率は適用されず、消費税率は10パーセントになります。
さらに、「食品表示法に規定する食品」であっても、「酒税法に規定する酒類」は、軽減税率の対象から除かれます。そのため、ワインや日本酒などは、消費税率は10パーセントになります。
もっとも、この「酒税法に規定する酒類」とは、アルコール度数が一度以上の飲料のことを言いますから、例えば、ノンアルコールビールで、アルコール度数が一度未満の場合には、「酒税法に規定する酒類」には該当せず、軽減税率が適用されることになります。
これに対し、料理で使うものであっても、例えば「みりん」など、アルコール度数が一度以上のものは「酒税法に規定する酒類」に該当し、軽減税率は適用されず、消費税率は10パーセントになります。
外食の判断基準
「食品表示法に規定する食品であり、酒税法に規定する酒類を除くもの」が軽減税率の対象になることについて説明をしてきましたが、「外食」は軽減税率の対象外となります。
そこで、どのような場合に「外食」と認められるのか、その判断基準が問題となります。
「外食」とは、①テーブル、椅子、カウンター等の飲食に用いられる設備のある場所において、②飲食料品を飲食させる役務の提供があることを意味します。
例えば、「テイクアウト(持ち帰り)」であれば、上記①の設備のある場所での飲食には該当しないので、「外食」には該当せず、軽減税率の適用が認められることになります。
これに対し、「イートイン」という、店内での客席(テーブル、椅子など)を利用する場合には、上記①の設備のある場所においての飲食ですから、「外食」に該当し、消費税率は10パーセントになります。
ここで、問題なのは、顧客が「テイクアウト」での注文をしたにもかかわらず、店内のテーブルや椅子などで食事をしている場合です。
このような場合でも、基本的には注文時の顧客の意思が基準となりますから、注文時において、「テイクアウト」という意思表示をしている以上、消費税率は8パーセントということで良いと考えられます。
もっとも、「イートイン」で注文している他の顧客と不平等にならないためにも、店内で飲食する場合には、消費税率は10パーセントになるということを、顧客に分かりやすく表示する必要があるでしょう。
出前・宅配とケータリング
出前・宅配とケータリングでも消費税率は異なります。
飲食料品の出前・宅配は、飲食料品を譲渡する行為に過ぎませんので、軽減税率の適用が認められることになります。これに対し、顧客が指定した場所において、調理、盛り付けなどを行うケータリングは、消費税率は10パーセントとされています。
出前・宅配とケータリングの違いですが、それは役務提供の有無の差と考えて良いでしょう。つまり、出前・宅配は、飲食料品を譲渡する行為はありますが、それ以外の役務の提供はありません。これに対し、ケータリングは、調理・盛り付けなどのきめ細かな役務の提供がありますから、飲食料品の譲渡に留まらないものとして、軽減税率の対象外とされているのです。
一体資産
最後に一体資産についてご説明いたします。
一体資産とは、「①食品と食品以外の資産があらかじめ一の資産を形成し、または構成しているものであり、②一の資産としての価格のみが提示されているもの」のことを言います。
例えば、キャラメルなどのお菓子に、小さなおもちゃが附属していることがあります。このような商品は、軽減税率が適用される食品と、適用されない玩具が一体化している商品であり、一体資産です。
一体資産では、原則として消費税率は10パーセントとなりますが、①一体資産の販売価格(税抜)が1万円以下であり、かつ、②一体資産の価額のうちに飲食料品の価額の占める割合が3分の2以上となるものであれば、軽減税率の対象となります。
先程のキャラメルなどのお菓子に附属しているおもちゃは、キャラメルと比べて、その価格は全体の3分の1未満であることが多く、一体資産となる可能性が高いでしょう。他方で、例えば、洋菓子と高価な容器がセットで販売されている場合には、容器の価格が全体の3分の1以上であることが多く、その場合には一体資産とはならない可能性が高いでしょう。
また、顧客により自由に組み合わせが可能な場合も、一体資産には該当しません。例えば、顧客がワゴンに入っている食品と食器を1つずつ自由に選定できるということを前提として、あらかじめ一体化されていない場合には、一体資産には該当しないと考えられます。
一体資産に該当するかどうかについては、個別の商品ごとに判断されることになります。もっとも、商品の組み合わせ次第では、広く軽減税率を適用させることが可能となるわけですから、顧客に対してのセールスポイントになる可能性があるので、有効に活用すると良いでしょう。
まとめ
これまで軽減税率が適用される場合について詳しくご説明をしてきました。消費税率の引き上げは、令和元年10月からと間近に迫っています。もし、軽減税率制度を正確に理解していなければ、適切な値段で販売することができず、ひいては消費者の方の信頼を失うことにもなりかねません。軽減税率についてお困りの方は、くぬぎ経営法律事務所にお気軽にご相談いただければ幸いでございます。
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