法人(会社)破産

法人(会社)において、事業の再生を図ったものの、どうしても再生することができず、税金や借入金の支払いができないことから、破産申立を選択しなければならないことはあると言わざるを得ません。

もっとも、個人の破産と違い、法人の破産は、債権者や従業員などの利害関係人が多数存在すること、在庫などの処分しなければならない資産が多いこと、仕掛品などが存在することなどから、一般的に複雑な手続となります。

 

法人破産において、どのような点を注意しなければならないのかについて、以下、ご説明致します。

 

破産申立にあたり準備すべきこと

法人の破産申立を行うにしても、可能な限り、混乱を防ぐように、適切に準備をしなければなりません。その準備として、まず行うべきことは、法人の資産状況と負債状況の把握です。資産状況と負債状況を把握することで、法人が債務超過なのかどうかを確認します。本当に債務超過なのか、再生の余地はないのかにつき確認することは、破産申立を決断する前提として不可欠でしょう。

 

また、債務超過であるとして、法人の資産のうち、早期に回収可能な財産(預貯金、有価証券、売掛金など)はどの程度あるのか、早期かつ正確に把握することが必要です。

なぜなら、法人破産を行うにしても、申立にあたっての弁護士費用、裁判所に対して納付すべき予納金など、相当額の費用が必要となります。破産申立にあたっての費用を捻出せずに、手続を進めることはできませんので、資産状況の把握は正確に行う必要があります。

 

このように、法人破産においては、法人の資産状況、負債状況を正確に把握することが何より重要です。

 

受任通知書の発送

受任通知書とは、弁護士が破産申立の手続に介入したことを、各債権者に通知するための書面です。受任通知書を送付するにより、債権者は法人が今後、破産申立をすることを知ることになります。債権者にとっては突然の通知で、混乱が生じることもあるので、受任通知書を送付する時期については、十分に検討する必要があるでしょう。

 

また、債権者が金融機関(銀行、信用組合など)である場合、金融機関に預貯金や出資金などがある場合には、受任通知書を送付した後、これらが相殺の対象になってしまう可能性があります。そのため、受任通知書を送付する前に、預貯金や出資金が相殺の対象にならないかについても検討しなければなりません。

 

従業員の問題

従業員を雇い続けると、多額の賃金が発生してしまいます。長年勤めてきてくれた従業員を解雇することは苦渋の選択ではありますが、これ以上の未払賃金の発生を防ぐためにも、解雇は必須となります。

 

ここで、未払賃金が発生している場合には、労働者健康福祉機構による未払賃金立替制度の利用を検討することになります。未払賃金立替制度とは、全額ではありませんが、未払賃金を労働者健康福祉機構が代わりに支払ってくれるという制度です。一般的には、申立後の破産管財人の協力により行うことになりますが、この制度を利用するため、未払賃金があることを客観的に証明するための資料(労働者名簿、賃金台帳、就業規則、通帳、タイムカードなど)を準備しておく必要があります。

 

また、経理や在庫状況など、代表者だけでは把握していないこともあり、一部の従業員の協力がなければ破産申立の準備ができないことがあります。その場合、一部の従業員には、財団債権として賃金を支払うことで、会社に残っていただく必要があります。代表者としては、最終的に解雇せざるを得ず、辛い立場だと思いますが、最後まで従業員との信頼関係をもって、破産申立の準備をしなければなりません。

 

このように、法人破産においては、これまで会社のために尽くしていただいた従業員の方への配慮及び信頼関係が不可欠です。可能な限り、その従業員の生活に支障が生じないよう配慮しなければ、スムーズな破産申立を実現することはできません。

 

在庫の問題

在庫の問題 画像

法人破産の特有の問題として、在庫の処理が問題となることがあります。例えば、洋服やバックなどを販売する会社であれば、一般的に多数の在庫を抱えていますが、このまま放置しておくと、多額の倉庫の賃料が掛かってしまいます。倉庫の賃料発生を可能な限り抑えるには、在庫の早期処分を検討しなければなりません。

 

まず、仕入れ先への売買代金が未払いの場合には、仕入れ先に対して商品を返還することを試みます。一般的に、商品を無償で処分することは、商品も資産である以上できません。売買代金が未払の場合、仕入れ先は動産の先取特権(別除権)を有することから(民法311条)、売買代金の債権消滅を条件に、商品を引き渡すことが可能となります。(債権額の減額につながる上に、在庫の処分が可能となります。)

 

その他の在庫についてですが、業者への処分を検討しなければなりません。ここで、注意しなければならないのは、不当に廉価な価格で売却してはならないことです。一般的には、相見積もりを3社ほどから取るなどして、売却を進める必要があります。そのとき取った見積もりが、売却代金が合理的であることを証する根拠となるでしょう。

 

仕掛品の問題

法人破産、特に建築会社の破産申立に多いことですが、仕掛品の問題が生じることがあります。例えば、建築中の建物があり、完成前に破産申立を行うと、工事がストップすることになり、注文者にも、下請業者にも多大な迷惑をかけることになってしまいます。

 

この点、破産管財人は、破産法53条に基づき、請負契約を解除することができます。しかし、解除しただけは、何ら問題は解決しません。最高裁判例においても、「当該請負契約の目的である仕事が請負人以外の者において完成することのできない性質のものでない限り」解除を認める旨判示しており(最高裁昭和62年11月26日付判決)、破産管財人による解除を制限しています。

注文者等に損失が生じないよう、下請業者が直接、注文者から請け負う形を取ることができないか、他の業者に依頼することができないか、申立前から検討し、対処する必要があるでしょう。

 

法人破産のまとめ

法人破産においては、個人の破産とは違い、利害関係人が多数存在し、また、その取引形態も複雑です。しかし、破産申立をする以上は、可能な限り利害関係人に損害を被らせないよう、計画的に手続を行う必要があります。

 

くぬぎ経営法律事務所の代表上村は、これまで、破産申立代理人、破産管財人として、様々な法人破産のケースを扱って参りました。その経験から、破産申立を行うにしても、可能な限り早期に対処し、計画的に申立準備を行うことが重要と認識しております。

確かに、法人破産は最後の手段かもしれませんが、再出発の機会を設ける場でもあります。法人破産についてお考えの方は、お気軽にご相談いただければ幸いです。

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