事業再生とは、その言葉のとおり、事業を抜本的に改革することで、収益状況を向上させ、企業の再生を図ることを意味します。
企業の経営状況とは、内部環境や外部環境の影響を受けることで、日々刻々と変化します。そのような中、時によっては、売上の減少、売上原価や販管費の増額などが生じることで、金融機関への債務の返済が厳しくなるということも生じ得ます。
債務の返済が不可能となれば、「破産」などの清算手続を考えなくてはなりません。しかし、破産を選択した場合には、最終的には法人格が消滅することになってしまいます(破産法35条)。これまで長きにわたり営んできた会社を、消滅させてしまうということは、取引先への混乱を招くことはもちろんのこと、長年にわたり企業のために尽くしてくれた従業員を路頭に迷わせてしまうことになりますから、可能な限り回避しなければなりません。
破産などの清算手続を行う前に、何らかの方法により、企業の再生を図ることができないか、ということが事業再生の問題です。
以下、事業再生の具体的な方法についてご説明致します。
事業再生の具体的な方法
事業再生を行うにあたり、必ず行うべきことは、事業計画書の作成です。
事業計画書を作成するにあたって、まずは、決算書類などから企業の財務状況や、経営資源(人、モノ、金、情報)を把握しつつ、SWOT分析(S:強み、W:弱み、O:機会、T:脅威)などを用いて、現状の問題点などを検討します。
上記分析結果を踏まえて、企業が目指すべき目標(売上・コスト・利益等の目標も含む)、目標を達成するために取り組むべき課題や対応策などを考察します。そして、これらの内容を対外的に示すことができるよう事業計画書としてまとめます。(予測となる貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)なども作成します。)
また、通常、企業では掛け取引(売掛、買掛)が行われています。そのため、売上高や売上原価等の発生時期と実際の現金の出入金の時期は異なっています。そこで、実際の現金の出入金を正確に把握するために、資金繰り表の作成は極めて重要となります。これまでの出入金(実績)は、月次試算表における貸借対照表(BS)や損益計算書(PL)を基に作成します。しかし、金融機関との交渉においては、資金繰り表は、実績だけでなく、将来的な資金繰り表も必要となってくるでしょう。
これらの作業は、非常に複雑ですが、現状の課題を分析し、今後の企業の目標や対応策を定めることは、収益の向上を図るだけでなく、①金融機関等の対外的な信用を得る、②補助金や助成金を獲得する、③社内の統一意識を図ることなどにつながり、事業再生を進めるには不可欠な作業です。
事業計画書や資金繰り表を整えた後、その計画に沿って行動していくことになります。ところが、金融機関への返済額が変わらなければ、必要な運転資金を確保できず、事業計画に沿って行動することも難しくなってしまいます。そこで、キャッシュアウトを減らすために、金融機関との間で、弁済期の繰り延べ(リスケ)などの交渉を行うことが必要となります。
このような金融機関との交渉においては、事業計画書や資金繰り表などが有効な資料になってきます。特に、将来の資金繰り表の作成は、今後の返済可能額を説明する上で極めて重要な資料となるでしょう。
もっとも、金融機関がこちらの提案に応じず、任意の交渉での事業再生が難しい場合には、法的手続を検討することになります。法的手続には、法人格を消滅させるための「破産」だけではなく、企業を再建するための「民事再生」または「会社更生」という手続があります。これらの手続は、破産のように債務を消滅させることはできませんが、相当額の債務減額を図ることが可能となります。
しかし、「民事再生」や「会社更生」は、裁判所に対して支払う予納金等の多額の費用がかかり、また、取引先の信用不安を生じさせることは避けられません。さらに、債権者が協力的でなければ、最終的に再生計画や更生計画が認可されないということも考えられます。そのため、これら法的手続を選択する前に、事業計画書や資金繰り表などを作成し、裁判外で、金融機関とのリスケ交渉を行うことの方が先決と言えるでしょう。
事業再生においては、事業計画書・資金繰り表などの様々な資料を作成し、また、金融機関との交渉も行わなければならないので、その作業は極めて複雑です。しかし、継続的な企業(ゴーイングコンサーン)を実現するためには、避けて通ることはできません。事業再生にお困りの企業様、事業主におかれましては、お気軽にご相談いただけましたら幸いです。
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