著作権の譲渡

著作権の譲渡とは?

企業間での取引においては、著作権の譲渡が行われることがしばしばあります。著作権とは、知的財産権の一つであり、著作物を他人に使用させる許可を与えたり、著作物を財産として所有したりすることができる権利を意味します。

著作物とは、著作権法により、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定められています。

著作物には、論文や小説などの文章だけでなく、絵画、イラスト、写真、コンピュータープログラムなど、様々な創作物に認められる権利です。作成者が「創作的に表現」したものであれば幅広く認められますから、幼児が作成した作文や絵にも、立派に著作権が発生し得ることになります。

企業間の取引においては、ウェブサイトの譲渡、コンピュータープログラムの譲渡、イラストの譲渡などの様々な著作権の譲渡を行います。このときに、著作権譲渡契約書を締結することになりますが、著作権譲渡契約書には、著作権特有の注意すべきポイントがあります。本記事では、著作権譲渡契約書を作成するにあたってのポイントについてご紹介致します。

 

著作権法第27条及び第28条の権利について

著作物の著作権を譲渡する際、「全ての著作権を譲渡する」と記載すれば良いようにも思えます。しかし、この記載だけでは、完全な著作権の譲渡を行うことができず、以下に述べるとおり、「全ての著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)を譲渡する」と記載しなければなりません。

すなわち、著作権法第27条には、「著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。」と記載されています。これは、著作物を作り変える権利は、著作者が専有し、著作者に無断で著作物を作り変えてはならないという意味です。

また、著作権法第28条には、「二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。」と記載されています。この意味は、誰かが著作物を修正や変更するなどして二次的著作物を創作しても、その二次的著作物に関する権利は、二次的著作物を創作した者だけではなく、元々の著作者(原著作者)も有するというものです。

 

著作権法第61条2項について

著作権法第61条2項について 画像

ところで、これらの著作権法第27条及び第28条においては、著作権法第61条2項により、「著作権を譲渡する契約において、第27条又は第28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。」と定められています。

つまり、譲渡する著作権に、「著作権法第27条及び第28条の権利を含む」ことを明記していなければ、著作権法第27条及び第28条の権利は、譲渡人に留保されたものと推定されてしまうのです。

そのため、著作権の譲渡を受けても、著作物を作り変えるには、譲渡人の承諾を得なければなりません。また、譲渡を受けた著作物から二次的著作物を創作しても、譲渡人もその著作権を有することになりますから、著作権の権利を行使する際、譲渡人の承諾を得なければならないことになります(最高裁平成13年10月25日第一小法廷判決、キャンディ・キャンディ事件参照)。

完全な著作権の譲渡を受けるためには、「著作権法第27条及び第28条の権利を含む」という記載を忘れないようにしなければなりません。

 

著作者人格権について

著作権の譲渡においては、著作者人格権についても配慮しなければなりません。

著作者人格権とは、著作者の人格を守る権利を意味します。具体的には、①公表権、②氏名保持権、③同一性保持権に分かれます。

公表権とは、著作物を公表するかどうか、公表の時期や方法を決める権利を意味します。著作者が、著作物を公表されたくない場合、その公表の差し止め等を求める権利が、この公表権に該当します。

氏名保持権とは、著作者名を表示するかしないか、表示するとすれば実名とするかどうかを決定する権利を意味します。著作者が自らの氏名を著作物に表示したいとき、その表示を求める権利が、この氏名保持権に該当します。

同一性保持権とは、著作者の意に反して著作物の内容を改変等されない権利を意味します。著作者が自らの意に沿わない著作物の修正等を止めるよう求める権利がこの同一性保持権に該当します。

著作者人格権とは、著作権法第59条に「著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。」と記載されているように、著作権譲渡契約を締結しても、譲受人に譲渡されない権利です。

しかし、著作権の譲渡後も、譲渡人から著作者人格権を行使されることで、著作物を自由に修正等ができなくなってしまえば、著作権の譲受人にとって、不測の事態を生じさせると言わざるを得ず、著作権の譲渡を受けた意味がなくなってしまいます。

このような事態が生じることを防止するため、著作権譲渡契約書には、必ず、「譲渡人は、譲受人ないし第三者に対して著作者人格権を行使しない」という著作者人格権不行使の条項を入れることになります。

この著作者人格権不行使の条項を入れることで、譲受人にとって不測の事態が生じることを防止することができるのです。著作権譲渡契約書の締結にあたっては、この著作者人格権不行為の条項を入れることを忘れてはなりません。

 

第三者の知的財産権の侵害防止について

第三者の知的財産権の侵害防止について 画像

著作権の譲渡を受ける際、その著作物が、他の第三者の著作権等の知的財産権を侵害していないかどうかについては、十分に注意しなければなりません。仮に、著作物が盗作であった場合など、第三者の知的財産権を侵害していた場合、著作物の利用の差し止めや損害賠償請求を受ける可能性があるからです。

しかし、第三者の知的財産権を侵害しているかどうかについては、譲受人の側にとって、その調査は極めて難しいと言わざるを得ません。

そこで、著作権譲渡契約書に、「譲渡人は、譲受人に対し、著作物が第三者の著作権等の知的財産権を侵害していないことを保証する」などの保証条項を設けることは、トラブルの防止にあたって有効な手段となりますので、必ず設けるべき条項と言えるでしょう。

 

著作権譲渡登録の利用について

最後に著作権譲渡登録の利用について、ご説明致します。

著作権法第77条1号によれば、「次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。」「著作権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。次号において同じ。)若しくは信託による変更又は処分の制限」と定められています。

つまり、文化庁の著作権登録制度をすれば、著作権の譲渡を第三者に対抗することができるのです。著作権の登録を行えば、著作権の二重譲渡を防ぐことができます。重要な著作権を保護するという点では、著作権登録制度を利用するかどうかについては検討に値するといえるでしょう。

著作権譲渡契約書を締結する際においても、著作権登録制度を利用することを念頭においている場合には、例えば、「譲渡人は、譲受人が著作権法第77条の定める著作権の譲渡登録を行う場合には、これに協力しなければならない。ただし、登録の手数料は、譲渡人の負担とする。」という条項を入れておくと良いでしょう。

 

まとめ

これまで著作権譲渡契約書を締結するにあたっての注意点等を述べてきました。著作権とは、特許権などとは異なり、登録しなくても発生する権利です。しかし、著作物の中には、コンピュータープログラムなどの財産的価値の高いものも多く含まれています。著作権の譲渡は企業間の取引において不可欠なものです。本記事が、著作権の譲渡にあたっての一助になれば幸甚です。

 

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