労働問題

企業法務を扱う中で、労働問題、つまり従業員(労働者)とのトラブルについては、雇用主側である企業様(法人様)から、しばしばご相談いただくテーマです。

企業とは「人」無くしては成り立ちません。確かに、昨今、AIの発達が目覚ましいものでありますが、AIが発達しても、そのAIを使う「人」がいなければなりません。
「人」つまり従業員の存在は、企業の発展においては不可欠であり、それゆえに従業員に対する教育の充実や、士気の向上を図ることも極めて重要なことなのです。

もっとも、従業員の能力や士気を向上させることは簡単ではありません。教育が過度なものになると、パワハラ、モラハラという事態等を生じさせ、結果的に、従業員の士気を低下させてしまうことにもなりかねません。

このような労働問題が生じないよう、従業員に対して適切な教育を施し、働きやすい環境を整えることこそ、企業の発展においては不可欠なのです。

労働問題に対する対処方法

従業員とのトラブル、つまり労働問題に対処するためには、従業員に対して適切な教育を施し、働きやすい環境を整えることが重要です。
もっとも、雇用主として、働きやすい環境を整えるために、具体的に何をすべきか、問題となります。

まず、適切な内容の就業規則を作成することが必須です。
就業規則とは、労働時間、賃金、休憩時間などの労働条件や服務規律などについて定めた規則(雇用主側と従業員との間のルール)のことを言います。
就業規則の作成は、「常時10人以上の労働者を使用する使用者」に義務付けられており、労働基準監督署に届出をしなければなりません。

そして、就業規則の内容は、労働基準法第106条に基づき、従業員に周知されていなければならないのですが、実際のところ従業員への周知が徹底されていないケースが少なくありません。
また、就業規則の内容を精査すると、割増賃金、深夜手当、有給休暇などの労働条件において、労働基準法などに反する内容になっているということも少なくありません。
就業規則が適切な内容でなければ、後に従業員との間で大きなトラブルになり、深刻な労働問題になってしまう可能性があります。就業規則の内容は、一度、専門家によるチェックを受けた方が良いでしょう。

次に、適切な内容の就業規則をもって労働条件・労働環境を整えても、従業員の勤務態度やスキル不足などにお悩みの企業様(法人様)も多く見受けられます。
従業員のスキルを向上させるために、適切な教育を行うことは不可欠であり、雇用主側としては、企業の発展のためにも、最大限、努力していかなければなりません。
例えば、「OJT」(実際の職務現場で、業務を通じて上司等が部下の指導を行う)、「OFF-JT」(職場外の研修を持って、知識の習得等を図る)などをもって、従業員のスキルを向上させることは非常に大切なことです。

そして、コミュニケーションの活性化を図ることも、従業員の能力向上には不可欠です。例えば、従業員の意見を反映させるために、ブレーンストーミング(参加者が自由な意見を述べ、多彩なアイディアを生み出すための会議法)を活用したミーティングを実施することや、福利厚生の一環として、社内の懇親会や社員旅行を実施することなどが考えられます。

しかし、雇用主側があらゆる努力を尽くしても、従業員が無断欠勤(あるいは合理的な理由のない欠勤)を繰り返すなどして、その勤務態度に改善が見られないような場合には、雇用主側としても、何らかの処置を取らなければならなくなります。
このような従業員において、雇用主の方から、「直ちに解雇したいが、どうすれば良いのか」というご相談をいただくことがあります。確かに、無断欠勤を繰り返す従業員に対して、直ちに解雇したいという気持ちも分かりますが、解雇は最終手段ですから、必ず、段階的な手続きを踏む必要があります。

つまり、最初は、「譴責・戒告」(従業員を注意すること)で、その改善を促します。それでも、改善が見受けられなければ、「減給」、「出勤停止」、「降格」を行い、それでも改善しなければ、「退職勧奨」や「解雇」を行うということになります。
直ちに、解雇するのではなく、あくまで従業員の勤務態度等の改善を図るため、段階的に処分を進めていくことが不可欠なのです。

なお、「減給」は、労働基準法91条に基づき、「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」と定められていますので、注意が必要です。
このように、雇用主側としては、あらゆる手段を用いて、従業員の能力向上に努めなければならず、「解雇」とは最終手段であるということを忘れてはなりません。
仮に、雇用主側があらゆる手段を尽くし、やむを得ずに従業員を「解雇」した場合、従業員側から、解雇が無効であるとして、労働者の地位の確認を求める仮処分の申立等をなされる可能性があります。

しかし、雇用主側が従業員の能力向上のために尽力してきたことは、合理的な理由に基づく解雇であることを基礎づけるものとして、裁判においては有力な証拠になります。つまり、雇用主側の上記努力は、従業員の能力向上を図るだけでなく、その後のトラブルを防止するという点でも極めて重要なことなのです。

労働問題によるトラブルを避けるには雇用主側の努力が不可欠です。もっとも、どのように努力しても、複雑な人間関係や感情論の対立により、その努力が実を結ばないことも少なくありません。
しかし、このような場合、弁護士がその仲裁に入ることで、互いに冷静な話し合いをすることで解決することもあります。労働問題においては、弁護士の役割は大きいと思います。労働問題でお困りの企業様(法人様)におかれましては、当くぬぎ経営法律事務所にお気軽にご相談いただければ幸いです。

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