逮捕、勾留、起訴などの刑事事件に関わるということは、一般的にはあまりないことかもしれません。
しかし、例えば、親類が万引き等をしてしまったとき、交通事故を起こして被害者に大きな怪我を負わせてしまったときなど、刑事事件に関わる可能性というのは、誰であっても起こり得ることなのです。
以下、刑事手続の流れについてご説明致します。
刑事手続問題とは?
まず、逮捕、勾留により身柄を拘束された場合、その身柄拘束期間は、基本的に、最大で合計23日間となります。その後、別件で再逮捕、再勾留される可能性はありますが、この間に、検察官としては、被疑者(容疑者)を起訴するのかどうかについて判断することになります。
弁護人としては、この間、自白事件の場合には、反省文の作成、謝罪文の作成や送付、身元引受書の作成、示談の交渉などを行うことになり、可能な限りの情状立証を行うことになります。
検察官が起訴すると判断した場合、容疑者は、「被疑者」から「被告人」となります。ここで、もし、身元引受人が存在し、保釈保証金を用意することが可能な場合には、弁護人としては、保釈の申請を検討することになります。
保釈が認められるかどうかは、身元引受人の有無に加え、前科前歴の有無、反省状況などの事情を総合的に考慮して決せられます。ただし、保釈が認められるためには、第一審においては、少なくとも150万円から200万円の保釈保証金が必要となります。
起訴された後、被告人は、裁判所に出頭し、審理を経て、判決を受けなければなりません。弁護人は、自白事件の場合、可能な限りの情状立証を尽くします。特に、被告人に前科前歴がない場合には、執行猶予付き判決を求めることになります。
執行猶予とは、例えば「懲役2年、執行猶予4年」という判決が下されたとします。判決の確定から4年間、被告人が社会内で何事もなく生活することができた場合には、懲役2年の刑を受けなくて良いという制度です。(ただし、この4年の間に、何らかの犯罪に手を染めてしまった場合には、そのときの犯罪に加え、懲役2年の刑も併せて受けなければなりません。)
弁護人の情状立証としては、捜査段階において収集した証拠の提出に加え、身元引受人を情状証人として申請する、被告人質問で可能な限りの情状事情を被告人に証言させるということが考えられます。
そして、判決の後、もし、その判決に不服であれば、控訴申立等の不服申立を検討することになります。
以下、刑事手続に関して問題となる具体例を紹介致します。
刑事手続に関して問題となるケース
被疑者・被告人と面会することはできるのか。
- 具体例
容疑者の身柄が拘束された場合、親族などが面会を希望することがしばしばあります。
そのとき、親族から、面会することはできるのか、というご相談をいただくことがあります。
親族からの面会は自由にできるのか問題となります。
-
対処方法
親族からの面会も、警察署や拘置所での面会時間内であれば、原則可能です。しかし、勾留において接見禁止の条件が付されている場合には、基本的に弁護人しか面会することができません。
このように接見禁止の条件が付されている場合で、どうしても本人との面会が必要という場合には、接見禁止の一部解除の申入れを行うことになります。つまり、面会者を特定し、面会時間を一定の日時、時間の範囲内で、面会の許可を求める手続です。
必ず認められる訳ではありませんが、親族であり、かつ被疑者、被告人にとって面会が必要という場合には、認められる可能性は十分にありますので、検討に値するでしょう。
執行猶予はどのような場合に付されるのか。
- 具体例
自白事件において、起訴されても、前科前歴がない場合には、執行猶予付き判決を受けられるように、弁護人としては情状立証を尽くすことになります。
もっとも、前科前歴がなくとも、必ずしも執行猶予が付されるというわけではありません。
どのような場合に、執行猶予付き判決となるのか、どのような情状立証活動をすべきかが問題となります。
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対処方法
この点、前科前歴がないという事情は、執行猶予付き判決を受けるための有益な事情です。
しかし、それだけでは必ずしも執行猶予付き判決を受けられるというわけではありません。
例えば、振り込め詐欺に関わってしまった場合、組織犯罪という悪質性に加え、被害金額も100万円以上と多額であることが多いため、実刑判決が多いと言わざるを得ません。
そのため、その他の情状立証、特に、被害者との示談交渉や被害弁償ができないかどうかを検討することは必要と言わざるを得ません。
もちろん、示談や被害弁償が必ずできるというわけではなく、被害者の心情に配慮して行う必要があります。
しかし、執行猶予付き判決を受けるにあたっては、前科前歴がないというだけでは足りないことが多く、可能な限りの情状立証を尽くすということは不可欠でしょう。
刑事手続まとめ
刑事手続においては、一旦身柄を拘束されると、その期間は長くなると言わざるを得ません。
その間に、可能な限りの弁護活動を行う必要があり、その活動が起訴の判断や判決内容に影響することは間違いありません。
弁護活動は、早期であればあるほど望ましいでしょう。
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