債務整理の中で、裁判外での交渉により債務を整理する方法を「任意整理」と言います。任意整理は、債権者との間で交渉をし、合意を締結することで債務を整理する手続です。そのため、手続自体は、自己破産や民事再生よりも簡易といえるでしょう。
しかし、借金が免除(免責)になるというわけではないので、事案によっては任意整理を選択することが適切でない場合があり、任意整理をすべき事案なのかどうか、よく吟味して決める必要があります。
任意整理問題とは?
任意整理とは、債権者との間で、将来利息なし、あるいは、低い金利での将来利息に抑えつつ、無理のない範囲の返済回数で、借金を返済するという合意を締結するものです。
任意整理は、自己破産のように債務の免除(免責)を受けることができるものではありません。しかし、将来利息の発生を抑えることにより、無理のない範囲で返済をすることが可能となります。
全ての消費者金融等に該当するわけではありませんが、一般的には、「60回払い、将来利息なし」という内容での合意が成立することが多いでしょう。
もっとも、任意整理は債権者との合意を必要とするものであり、債権者が合意しなければ成り立たない債務整理の手続です。近年においては、債権者によっては任意整理について承諾しない債権者もいます。
また、債務が免除になるわけではないので、そもそもある程度の返済能力がなければ、任意整理をしても無意味になってしまいます。
そのため、任意整理を選択するにふさわしいかどうかは、事案ごと、個別に判断していかなければなりません。
任意整理において問題となるケース
任意整理において、債務が減額することはないのか。
- 具体例
任意整理においては、債権者との合意により、将来の利息の発生を抑えることで、債務の整理を行うものであります。そのため、原則として、債務の減額を図ることは難しいのですが、例外的に、債務の減額を図ることができる場合があります。
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対処方法
任意整理において債務を減額できる場合として、利息制限法を超える金利を支払っていたという場合があります。
かつて、消費者金融等は、利息制限法を超える金利での貸付を行っていたため、借主は本来であれば支払う必要のない利息を支払っていたことがありました。過払い金が発生するほどではなくとも、本来支払うべき利息を超えて支払っていた分、債務が減額する場合があります。
くぬぎ経営法律事務所においては、利息制限法を超えて金利を支払っていたような事情がある場合、利息制限法に引き直し計算を行い、正確な借金額を算出した上で、債権者との交渉を行っております。
任意整理において、デメリットはないのか。
- 具体例
任意整理を行うかどうかを決断するにあたっては、そのデメリットを把握しなければなりません。以下、任意整理を行うにあたってのデメリットをご説明致します。
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対処方法
任意整理のデメリットとしては、まず、信用情報機関による信用情報(ブラックリスト)に掲載されるということです。ブラックリストに掲載されると、5~10年ほど、新たにお金を借りることが難しくなります。任意整理を選択するには、新たな借り入れをしなくとも、債権者への返済をしつつ、生活することができる収入がなければなりません。
また、一旦、任意整理を選択すると、その後、返済ができなくなったとして、自己破産に方針を切り替えた際、特定の債権者に偏って返済していないかどうかを調査するため、少額管財事件として処理される可能性が高くなります。
少額管財事件とは、破産手続の中で、破産管財人が選任される少々複雑な手続であり、また、裁判所に納める実費額(予納金)も大きくなります。必ず少額管財事件になるというわけではありませんが、任意整理を選択するには、本当に返済が可能なのかどうか、慎重に吟味をした上で、選択すべきでしょう。
債権者が任意整理に応じない場合にはどうするのか。
- 具体例
任意整理とは、債権者の合意が成立しなければ認められません。債権者との合意が成立しない場合にはどうすれば良いのか、問題となります。
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対処方法
消費者金融としても、商事時効(5年)にかかってしまうことを回避するため、任意整理での合意には、ある程度積極的に行ってくれることが多いです。
しかし、消費者金融よっては、「将来利息なし(または、低金利での利息)、かつ60回の分割払い」という内容では承諾しないこともあります。
その場合には、任意整理以外の債務整理手続(自己破産、民事再生)を検討しなければなりません。
ところが、自己破産の場合、少額管財事件の予納金を捻出することができないなどの事情により、直ちに申立をすることができないことがあります。
その際には、やむなく、日数をかけて、自己破産等のための費用相当分を積み立てていただくことになります。
任意整理まとめ
任意整理を選択するべきかどうか、事案に応じて個別に検討しなければなりません。
そして、この任意整理を選択するか否かは、借金額、ご相談者・ご依頼者の資力、取引の経緯など、総合的に判断した上で慎重に判断しなければなりません。
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