離婚・男女問題では、配偶者の不倫・浮気を理由として、慰謝料を請求したいというご相談が最も多いと言えるでしょう。
不倫・浮気をすることは、法律上は「不貞行為」と言い、民法上の不法行為に該当しますから、不倫・浮気をされた者は、慰謝料としての損害賠償を請求することが可能です。
もっとも、実際に不倫・浮気をしている疑いがあるものの、相手方がこれを否定するなどすれば、証拠を積み重ね、裁判により解決をしなければなりません。
不倫・浮気(不貞行為)に関するご相談・ご依頼は、感情面での対立なども生じて、複雑な事件になってしまうことがあります。
不倫・浮気による慰謝料問題とは?
まず、相手の配偶者が不倫・浮気をしている疑いがあるとして、どのように慰謝料請求(損害賠償請求)を行えば良いのかが問題となります。
慰謝料の支払義務が生じる者とは、不倫・浮気をした配偶者と、その不倫・浮気の相手方(不貞行為の相手方)の2人であり、両者は連帯して責任を負うことになります。
ご相談者の中では、まず、配偶者ではなく、不貞行為の相手方に慰謝料を請求して欲しいというご要望をいただくことがあります。
しかし、立証の程度にもよりますが、不倫・浮気をしていることが疑われる証拠があるだけの状態で、直ちに、不貞行為の相手方に対してだけ慰謝料を請求することは、不倫・浮気をしていない可能性もあることから、リスクがあると言わざるを得ません。
そのため、慰謝料を請求するにおいても、その前提として、まずは、不倫・浮気をしたと疑われる配偶者からの事情聴取を行った方が良いでしょう。
次に、慰謝料の具体的な請求手段ですが
①電話等で直接本人に連絡する
②内容証明郵便等を利用する
③訴訟等の裁判手続を利用する
などの方法があります。
ここで、不貞行為の相手方に対して請求する場合、相手方としても他の家族に知られたくないなどの理由から、積極的に和解に応じることがありますので、まずは①電話等で直接本人に連絡した方が良いでしょう。
(仮に、電話番号等が分からない場合、②内容証明郵便等を利用しての請求を行うしかないと思います。)
交渉の過程の中で、証拠があるにもかかわらず、相手方が不倫・浮気(不貞行為)をしたことを否定する場合には、やむなく訴訟等の裁判にならざるを得ません。
裁判での慰謝料額は、概ね50万円から300万円程度になることが一般的です。
その金額は、離婚の有無、婚姻期間、不倫・浮気(不貞行為)の期間、子どもの存在、互いの収入状況などから判断することになります。
事案により様々ですが150万円程度が一つの基準と言えるでしょう。
以下、不倫・浮気による慰謝料に関して、具体例とその対処方法についてご説明致します。
不倫・浮気による慰謝料に関して問題となるケース
慰謝料を請求するにあたり、どのような証拠が必要か。
- 具体例
不倫・浮気を疑ったとしても、決定的な証拠がなければ、慰謝料を請求することはできません。
「不倫・浮気を証する証拠として、どのように証拠を集めれば良いのか」というご相談は、不倫・浮気による慰謝料に関するご相談の中で、最も多い相談内容と言って良いでしょう。
どのような証拠が必要なのか、どのように証拠を集めれば良いのか、問題となります。
-
対処方法
慰謝料を請求するにあたっては、不倫・浮気をしている者が一緒にホテル等に入ろうとする写真等があれば、最も直接的な証拠と言えるでしょう。
また、深夜に一緒に手をつないで歩いているという写真等も、何ら男女関係のない者同士が、このように一緒に歩くということは通常あり得ないことから、不倫・浮気を証するものとして有力な証拠といえます。
ただし、このような決定的な写真等を手に入れることは簡単ではなく、探偵業者に調査を依頼しなければ難しいかもしれません。
もっとも、探偵業者に依頼した場合には相当額の費用が必要となります。
不倫・浮気による慰謝料額は高額ではないので、費用倒れになるリスクを認識しておく必要があります。
一般的に、最も活用される証拠としては、不倫・浮気の相手方(不貞行為の相手方)との電子メールやラインのやり取りです。
性的な表現を用いた内容であれば、不倫・浮気をしていることが強く推認されるので、有効な立証手段と言えます。
このような電子メールやラインは、仮に見たとしても、あまり見たくないものかもしれません。
しかし、裁判では決定的な証拠になり得るものなので、仮に、配偶者の携帯電話を見て、このような電子メールやラインを確認したときには、その画面の写真をデジタルカメラ等で撮影しておくと良いでしょう。
その他、2人で宿泊した形跡のあるホテルの明細書なども間接的ではありますが、重要な証拠となり得ます。
不倫・浮気(不貞行為)の相手方がチェックインの際に署名等を行っている可能性もあり、弁護士会照会制度等を通じて、ホテルに問い合わせをすることも可能になってくるからです。
いずれにしても、不倫・浮気をしている疑いがある場合、相手を問い詰めるのではなく、そのことを証する証拠の収集が重要となります。
不倫・浮気による慰謝料が認められない場合はあるのか。
- 具体例
証拠により、不倫・浮気をしたことは確実でも、必ず不倫・浮気による慰謝料が認められるというわけではありません。
例えば、相手方から、「既に夫婦関係が破綻していた」という反論がなされることが頻繁にあります。
つまり、既に夫婦関係が破綻していることから、不倫・浮気による精神的な損害は被っていない、もしくは損害額も少額であるという反論です。
このような反論がなされたとき、どのように対処すべきか問題となります。
-
対処方法
「既に夫婦関係が破綻していた」という反論に対しては、「不倫・浮気(不貞行為)が発覚する前は、夫婦関係は破綻していなかった」ということを証明する証拠を提出することになります。
例えば、①夫婦が仲良く写っている写真、②一緒に旅行に行ったことを証する明細、③互いに親戚との付き合いがあったことを証する証拠などが挙げられます。つまり、不倫・浮気(不貞行為)の発覚前は、普通の夫婦生活が営まれていたことを推認させる証拠を提出することになります。
もっとも、これらの証拠が十分にそろわなくとも、「既に夫婦関係が破綻していた」ということは、①既に別居期間が何年にも及んでいる、②こちら側に、不貞行為や暴力等の事情があるということがなければ、その立証は簡単ではありません。
そのため、「既に夫婦関係が破綻していた」という反論がなされても、特別、慌てる必要はなく、不倫・浮気(不貞行為)が発覚する前の夫婦生活について、可能な限り立証することが肝要です。
慰謝料を請求した場合、必ず離婚しなければならないのか。
- 具体例
不倫・浮気による慰謝料を請求する場合、必ず離婚しなければならないのか、というご相談をいただくことがあります。
確かに、配偶者が不倫・浮気(不貞行為)をしていても、離婚をしてしまうと今後の生活費(婚姻費用)を受け取れなくなってしまうという問題が生じ得ます。
不倫・浮気による慰謝料を請求しつつ、婚姻の継続を選択することができるのか問題となります。
-
対処方法
結論を述べると、不倫・浮気による慰謝料を請求したからと言って、必ず離婚しなければならないというわけではありません。
生活費(婚姻費用)を受け取るためなどの理由から、あえて離婚せず、婚姻の継続を選択することも十分にあり得ます。
もっとも、婚姻継続を前提としての慰謝料請求をした場合、精神的被害の程度は、離婚した場合と比較すると重くはないということで、慰謝料の金額はやや低額になります。
一般的には100万円程度になることが多いでしょう。
なお、不倫・浮気をした配偶者は、「有責配偶者」となり、その結果、こちらに対して離婚請求することは難しい状況になります。
特に未成熟の子どもがいた場合の離婚請求は極めて難しいと言えるでしょう。
そのため、不倫・浮気により被害を被った方は、離婚するか、婚姻を継続するのか、自身の経済力等を考慮して、慎重に検討することが大切です。
不倫・浮気による慰謝料まとめ
不倫・浮気による慰謝料の問題は、身近な問題であるものの、金銭面だけではなく、感情対立が激しくなりやすい事件の一つです。
また、不倫・浮気(不貞行為)の事実そのものが争いになる場合には、裁判により解決せざるを得ません。
その際には、弁護士によるアドバイスを受けつつ、十分な証拠を用意し、法律に基づく正しい手続により対処することが不可欠ですから、お早目にご相談いただくことをお勧め致します。
おすすめの記事
- 遺産・相続遺産・相続問題は、昨今の高齢化社会の中、年々増加しています。 もっとも、遺産・相続問題は、…
- 遺言遺言は、一般的には「ゆいごん」と言われることが多いのですが、法律的には「いごん」と言います…
- 遺留分遺留分は、請求できる期間に制限があるなど、その行使方法や評価方法などが複雑です。 そのため…
- 相続税相続においては、遺産の分配方法だけでなく、相続税という税金の問題も生じます。 確かに、相続…
- 交通事故交通事故とは、何の前触れもなく、突然起きてしまいます。 しかし、被害に遭われる方のほとんど…
- 後遺障害交通事故によって傷害を受けた際、治療を継続しても完全に完治せず、後遺障害が残ってしまうこと…
- 休業損害(休業補償)交通事故に遭うと、治療費だけではなく、治療を行うための病院への入通院により、仕事を休まざる…
- 熟年離婚「熟年離婚」とは、一般的には長く連れ添った夫婦が離婚することを言います。 昨今においては、…
- 不倫・浮気による慰謝料離婚・男女問題では、配偶者の不倫・浮気を理由として、慰謝料を請求したいというご相談が最も多…