相続税

相続においては、遺産の分配方法だけでなく、相続税という税金の問題も生じます。
確かに、相続税には基礎控除が認められているため、全ての相続事案において相続税が発生するというわけではありません。
しかし、どのような相続事案の場合でも、遺産が基礎控除の範囲内か否かについては、常に意識しなければならず、遺産の評価をしつつ、相続税が発生しないかどうかを調査することは不可欠です。

以下、相続税に関する注意点等について、具体例などを交えてご説明致します。

相続税問題とは?

相続税とは、被相続人の財産を相続した場合や、遺言(遺贈)や死因贈与契約により財産を取得した場合などに発生する税金です。
相続税の申告は、被相続人の住所地を管轄する税務署に対して申告書を提出することにより行います。
(相続人の住所地ではないので、注意が必要です。)
そして、最も注意をしなければならないのは、相続税には申告期限があるということです。
つまり、相続税の申告と納税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。

10か月という短い期間の中で、相続人の調査、遺産の評価、遺産分割協議などを行う必要があることを考えると、かなりタイトなスケジュールにならざるを得ません。
相続税の基礎控除額は、かつては、「5000万円+1000万円×法定相続人数」という計算式により算出された金額でしたが、法改正により、2015年1月1日以降は、「3000万円+600万円×法定相続人数」に変更となりました。
その結果として、これまでは相続税を負担しなくて良かった方も、相続税の申告及び納税を行う必要が生じたため、近年、相続税に関する意識及び関心が高くなっています。

以下、相続税に関して、問題となるケースを、具体例を交えてご説明致します。

相続税に関して問題となるケース

「相続の開始があったことを知った日」とはいつなのか。

具体例

相続税の申告・納税は、「相続の開始があったことを知った日」から10か月以内に行う必要があります。そして、相続の開始があったことを知った日」とは、通常は、被相続人が亡くなった日を基準とします。

もっとも、被相続人が一人暮らしをしていたため、被相続人が亡くなったことの発見が遅れることがあります。

そのようなときに、「相続の開始があったことを知った日」とはいつなのか問題となります。

対処方法

「相続の開始があったことを知った日」という文言のとおり、被相続人がなくなったことの発見が遅れた場合には、相続人が被相続人の死亡を知った日となります。

もっとも、「相続人が被相続人の死亡を知った日」がいつなのか、その証明が必要となります。

具体的には、死亡届の控え、除籍謄本、被相続人を発見した経緯、葬儀関係の領収書の日付などから証明することになります。

申告・納税期限内に、遺産分割協議が整わないがどうすれば良いか。

具体例

相続税の申告・納税は、「相続の開始があったことを知った日」から10か月以内に行う必要があります。

しかし、10か月という短い期間では、遺産分割協議まで整わないということも多いです。

このような場合、相続税の申告・納税期限に間に合わないため、どのように対処すべきか問題となります。

対処方法

相続税の申告・納税期限については、特殊な事情がない限り、延長することができず、たとえ、遺産分割協議が整っていなくとも、申告・納税をする必要があります。

もし、申告・納税しない場合には、無申告加算税や延滞税が課せられることになります。

しかも、相続税には、連帯納付義務があり、自己の相続税だけでなく、他人の相続税についても納付する義務があります。

そのため、たとえ、遺産分割協議が整っていなくとも、相続税の申告・納税だけは、他の相続人との協力の下に行わなければなりません。

 

申告・納税期限までに間に合わない場合には、法定相続分に基づいて相続人が相続したという前提で、申告・納税を行います。

そして、後に遺産分割協議が成立した後で、修正申告を行うという方法が一般的です。

相続税において、何か優遇・特例措置はあるのか。

具体例

これまで被相続人名義の自宅で同居してきた配偶者が、その自宅を相続する場合に、自宅に住み続けたいが、相続税を支払うだけの余裕がない場合、どのように対処すべきか問題となります。

対処方法

相続税には、様々な優遇・特例措置がありますが、このようなご相談の場合には、「配偶者の税額軽減制度」を利用することになります。

「配偶者の税額軽減制度」とは、1億6000万円または配偶者の法定相続分相当額のどちらか高い方が控除されるという優遇措置を言います。

つまり、配偶者は、遺産分割や遺贈により受け取った財産が、法定相続分以内であれば税金がかからず、また、法定相続分を超えて相続しても、1億6000万円までは税金がかからないことになります。

また、配偶者や被相続人と同居していた親族であれば、宅地の評価額を最大で80パーセント減ずることができるという「小規模宅地の特例」を利用することができます。

このように、相続税には、様々な優遇・特例措置がありますので、これらの優遇・特例措置を有効に活用すると良いでしょう。

推定相続人に不動産を贈与するときに贈与税の軽減措置はありますか。

具体例

不動産について、将来の争いを防ぐために、亡くなる前に特定の(推定)相続人に対して、不動産を贈与することが考えられます。

しかし、一般的に不動産を贈与すると贈与税が発生することになりますから、その対処が問題となります。

対処方法

このようなケースにおいては、「相続時精算課税制度」を用いることが考えられます。

「相続時精算課税制度」とは簡単に言えば、相続時まで課税を先延ばしするという制度です。

つまり、2500万円までの贈与分には、贈与時において贈与税はかからず、最終的に、相続税として清算することになります。

この点、特定の相続人に対して不動産を譲りたいという場合には、わざわざ生前に贈与しなくとも、遺言を整えることで足りるかもしれません。

しかし、投資物件として賃料収入のある不動産を贈与する場合には、その賃料収入分は、贈与後においては、受贈者(贈与を受けた者)の収入になります。その結果、相続財産の増加を防ぐことができ、相続税の対策になり得ます。

また、不動産の評価額の基準時が相続時ではなく、贈与時となりますので、相続時に評価額の上昇を見込むことができるような不動産の場合には、相続税の増加を抑えることができるので、「相続時精算課税制度」は有意義です。

「相続時精算課税制度」を選択するか否かは、個別の事案ごとに検証すると良いでしょう。

相続税において土地をどのように評価すれば良いのか。

具体例

相続税の申告にあたっては、土地の評価が問題になることがあります。

評価額には、固定資産評価額、路線価、市場価額(鑑定評価額)など様々な評価がありますが、どのような評価基準を使えば良いのかが問題となります。

対処方法

相続税の計算の際、土地の評価は基本的には、国税庁が公表する路線価を基準とします。

路線価とは、簡単に言えば、国税庁が公表する「道路に面する宅地の1㎡あたりの評価額」であり、相続税や贈与税を算出する基準となるものです。

もっとも、路線価には、補正率(奥行価格補正率、間口狭小補正率など)などを踏まえ、公図、測量図などを基に詳細な計算をする必要があります。

なお、土地の中には、路線価の付されていない道路にしか接していないという場合があります。その場合には、特定路線価の設定を申出するなどして対処することになります。

相続税まとめ

相続税については、全ての事案において発生するわけではないのですが、どの事案でも必ず意識をしなければなりません。
しかし、相続税は、個別の事案ごとに詳細な計算をしなければならず、非常に複雑です。その反面、詳細な計算をしながら遺産分割協議を行うことは、協議を円滑に進める上でも有益です。
相続税の問題は、遺産分割協議を行う上では、切り離すことはできないテーマと言えるでしょう。

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