ハラスメント

ハラスメントという言葉を一度は聞いたことがあるかと思います。
ハラスメントとは、行為者である本人の意思に関わらず、相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたと感じさせたりする発言や行動を意味するものです。

ハラスメントには、様々な種類がありますが、労働問題では、「セクハラ、パワハラ、モラハラ」などが代表的な例であり、ご相談いただく中でも、頻繁に取り上げられる内容です。
この「セクハラ、パワハラ、モラハラ」の問題は、労働者だけの問題ではありません。
雇用主側としても、労働者を健康で安全な職場で働かせるという「安全配慮義務」、「職場環境配慮義務」等を負担しているわけですから、これらハラスメントが生じないように十分に注意をしなければなりません。

ハラスメント問題とは?

「セクハラ、パワハラ、モラハラ」に該当するかどうかは、法律により決まるわけではなく、その該当性は個別具体的に判断することになります。

まず、「セクハラ」とは、「性的嫌がらせ」や「相手の望まない性的言動」のことを指しますが、その具体的な内容とは、性的な言動を執拗に繰り返す行為や卑猥なポスターを職場に貼る行為など、実に様々です。

通常、業務を遂行する過程で性的な言動等は不要でありますから、業務の遂行において必要であったという特別の事情がない限り、「セクハラ」に該当する可能性が高いといえるでしょう。

次に、「パワハラ」、「モラハラ」についてご説明致します。

「パワハラ」とは、「職場内での優位性」を背景に行われる行為ですが、その内容は、暴行などの身体的な攻撃だけではなく、他の社員の前で無能である旨罵るなどの精神的な攻撃や、到底処理することができないような無理難題を押しつける、職場で孤立させるという行為も含まれ、非常に多岐にわたります。

他方、「モラハラ」とは、「パワハラ」と似た概念でありますが、言葉や態度などにより、巧妙に人の心を傷つけるという、ある種「いじめ」に近い内容です。

もっとも、「パワハラ」、「モラハラ」に該当するかどうかの問題は、「業務の適正な範囲」を超えたかどうかと密接にかかわり、範囲外かどうか、その判断が難しい場合もあります。

例えば、部下が業務中に重大なミスをしたことで、上司が部下を厳しく注意するということはありますが、これは「業務の適正な範囲」として、「パワハラ」には該当しないでしょう。「パワハラ」、「モラハラ」に該当するかどうかは、その内容、程度、業務関連性などを基準とし、個別具体的な判断を要することになります。

仮に、「セクハラ、パワハラ、モラハラ」に該当する場合、当該行為を行った者(加害者)は、被害者に対して、不法行為に基づく損害賠償責任を負担する可能性があります。(ただし、認められる損害賠償額は、一般的に高額ではありません。)

また、加害者だけではなく、雇用主側(会社)も、「安全配慮義務」、「職場環境配慮義務」の違反や、使用者責任に基づく損害賠償責任を負担する可能性があります。

そして、このような「セクハラ、パワハラ、モラハラ」がある職場環境は、社員の士気にも影響することになりますので、雇用主側にとっても、極めて重大な問題といえるでしょう。

「セクハラ、パワハラ、モラハラ」の防止は、労働者側だけでなく、雇用主側にとっても、極めて大切なことなのです。

以下、「セクハラ、パワハラ、モラハラ」の問題につき、具体例を交えて、ご説明致します。

セクハラ、パワハラ、モラハラに関して問題となるケース

セクハラ、パワハラ、モラハラ行為の立証手段とは?

具体例

「セクハラ」、「パワハラ」、「モラハラ」などのハラスメントに関するご相談で最も多い内容は、どのような証拠を集めれば良いのか、ということです。

これらハラスメントの行為は、社内で、突発的になされることが多いため、その証拠集めは難しいと言わざるを得ません。

「セクハラ」「パワハラ」「モラハラ」などの「ハラスメント」に対して、どのように証拠を収集すべきか、問題となります。

対処方法

日頃から「セクハラ」「パワハラ」「モラハラ」などを受け、ある程度、その行為がなされることが予測できる場合には、あらかじめICレコーダーなどをセットし、音声を録音しておく方法が最も簡便かつ直接的と言えるでしょう。

もっとも、タイミング良く、「セクハラ」「パワハラ」「モラハラ」の行為が起きたときの音声を録音することは容易ではありません。

もし、「セクハラ」「パワハラ」「モラハラ」の行為がなされたときには、その他の上司に電子メール等で報告、改善を求めるという方法も効果的です。

これらの行為がなされた直後に電子メール等で文章を残すことは、行為の改善を求めるだけでなく、その後の裁判資料としても使用することが可能です。

いずれにせよ、何らかの方法により「セクハラ」「パワハラ」「モラハラ」行為を、客観的な資料として形に残すということが重要です。

セクハラ、パワハラ、モラハラによる損害の立証手段とは?

具体例

「セクハラ」、「パワハラ」、「モラハラ」を客観的に立証できたとしても、損害賠償請求をするにあたっては、その「損害」の立証をしなければなりません。

しかし、「セクハラ」、「パワハラ」、「モラハラ」による被害とは、精神的な損害の側面が強いことから、その損害をどのように立証すれば良いのか、また、損害額をどのように算出すれば良いのか、非常に難しいところであります。

対処方法

「セクハラ」、「パワハラ」、「モラハラ」による損害は、主に「慰謝料」という形で請求することになりますが、「損害の発生」、「損害と因果関係の立証」、「損害額の算出」は非常に難しく、また、一般的にはそれほど高額にならないと言わざるを得ません。

特に、「セクハラ」、「パワハラ」、「モラハラ」により損害を被ったという「因果関係」の立証は、最も難しいといえるでしょう。

 

立証手段として、「セクハラ」「パワハラ」「モラハラ」により心身に不調をきたしたと思われる場合には、無理を得ず、病院等に行き、治療を試みることが大切です。 治療を継続することで、傷病の程度や通院期間などから、その損害額を割り出すことが可能になってきます。

そして、その通院が、「セクハラ」、「パワハラ」、「モラハラ」に起因する旨の診断がなされれば、損害と因果関係の立証としては相当程度なされたと言えるでしょう。

精神的な損害をどのように立証するのか、非常に難しい問題ですが、病院等への通院は、一つの有効手段ではないかと思います。

 

心身に不調をきたしている場合には、無理をせず、じっくり治療を試みることが大切でしょう。

雇用主側としては、どのように対処すれば良いのか?

具体例

雇用主側として、「セクハラ」、「パワハラ」、「モラハラ」の行為が職場でなされ、職場環境が悪化すると、社員の士気が低下してしまうことにもなりかねません。

また、雇用主側も、労働者の安全に配慮するという安全配慮義務等を負担していることから、仮に、「セクハラ」、「パワハラ」、「モラハラ」により、労働者が体調を崩したという場合には、上記義務違反を問われかねません。

雇用主側として、このような「セクハラ」、「パワハラ」、「モラハラ」について、どのように対処していく必要があるのか、問題となります。

対処方法

まず、「セクハラ」、「パワハラ」、「モラハラ」を行っている者自体が、その行為が違法であると認識していない可能性がありますので、違法である旨の認識をさせることが重要となります。

そこで、例えば、「セクハラ」、「パワハラ」、「モラハラ」に該当する行為を、具体例を交えつつ説明し、その行為を禁止する旨を就業規則等で定めておくことが考えられます。

就業規則等で定めることにより、当該行為が禁止されていることを社内の統一的な認識とし、これを遵守させることが重要となります。

 

また、被害者が「セクハラ」、「パワハラ」、「モラハラ」の行為を受けた際、そのことを申告できる窓口を設ける、被害者及び加害者からの事情聴取、加害者への教育を行うなどの対応マニュアルを作成するということも考えられます。

実際に、「セクハラ」、「パワハラ」、「モラハラ」についての対応マニュアルを作成している企業は多いとは言えません。しかし、上記マニュアルがあれば、社員に対して、「セクハラ」、「パワハラ」、「モラハラ」の行為が違法であることを認識させることができ、社内の意識改革に資することになるものと思料致します。

いずれにしても、「セクハラ」、「パワハラ」、「モラハラ」が行われているにもかかわらず、これらの行為を放置しておくことは、雇用主側の安全配慮義務違反にもなり得ることです。

 

社内の「セクハラ」、「パワハラ」、「モラハラ」行為に関する理解、認識及び教育は重要であり、そのための就業規則の規定やマニュアル整備は不可欠といえるでしょう。

ハラスメントまとめ

働環境、労働者の士気に影響する話ですから、労働者だけでなく、雇用主側としても重要な問題です。
確かに、これらの行為を完全に排除することは難しいかもしれません。しかし、対策、対応次第では、これらの行為を防止し、労働環境の健全化に繋がる可能性も十分にあります。

労働者側だけでなく、雇用主側としても、重要な問題ですので、これらハラスメント行為に不安を覚えておられる方は、お気軽にご相談いただけますと幸いです。

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