交通事故に遭うと、治療費だけではなく、治療を行うための病院への入通院により、仕事を休まざるを得ない場合があります。
このように休業したことで発生する損害を「休業損害(休業補償)」と言い、被害者としては、休業したことでの損害分を補償してもらわなければなりません。
なお、この休業損害(休業補償)は、不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき、請求することになります。
休業損害(休業補償)問題とは?
休業損害(休業補償)とは、交通事故による傷害を負い、休業を余儀なくされた際、交通事故がなければ得られたはずの収入相当分の損害を意味します。
なお、「休業損害」とは、自賠責保険に用いられる言葉であり、「休業補償」とは労災保険において用いられる言葉です。
どちらも休業した減収分を補償するということで、ほぼ同意義といえるでしょう。
休業損害(休業補償)が認められるためには、①休業したこと、②治療にあたり休業することが必要であったこと、③被害者の収入状況などを、資料を用いて立証することになります。
まず、①休業したことを証明するには、勤務先に「休業損害証明書」の作成を依頼することで証明することが一般的です。
その他、病院等のカルテ等から入通院していることを証明することで休業していることを間接的に証明するという方法も有効でしょう。
もっとも、休業をすれば、休業による減収分が必ず補償されるというわけではありません。
休業損害(休業補償)が認められるには、②治療にあたり、休業することが必要であったという因果関係を証明する必要があります。
因果関係を証明する方法としては、医師の作成した意見書、治療経過を証するカルテなどから証明することになります。
さらに、休業損害(休業補償)の金額を定めるため、③被害者の収入状況を明らかにする必要があり、被害者の源泉徴収票、直近の3か月分の給与明細書などを用いて立証します。
そして、1日あたりの休業損害(休業補償)分を算出するには、源泉徴収票を用いる場合には、源泉徴収票に記載された年額(額面)の収入を365日で除した金額を用いることが一般的と言えるでしょう。
以下、休業損害(休業補償)について、具体例を交えながら、詳しくご説明致します。
休業損害(休業補償)に関して問題となるケース
休業損害(休業補償)はいつまで認められるのか。
- 具体例
任意保険会社から「これ以上、休業損害(休業補償)は認められない」と言われ、治療中にも関わらず、補償が打ち切られてしまうということがあります。
休業損害(休業補償)が、どの程度の期間であれば、認められるのか問題となります。
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対処方法
休業損害(休業補償)は、どんなに長く認められても「症状固定」までとされています。「症状固定」とは、これ以上治療を継続しても良くならないという状態のことを言います。「症状固定」以降は、休業損害(休業補償)は認められず、後遺障害の問題(逸失利益)として処理されます。
しかし、必ずしも「症状固定」までの休業損害(休業補償)が認められるというわけではなく、治療のために休業する必要があったことを証明する必要があります。
一般論ですが、例えば、むち打ちによる傷病の場合、交通事故発生から3か月程度経過すると、任意保険会社から休業補償を打ち切られることが多いです。その際に、治療のために休業が必要であることを医師に証明してもらうために意見書等を作成してもらいます。仮に、そのときに、任意保険会社が補償の継続を認めなくとも、後の裁判において極めて重要な証拠となります。
休業損害(休業補償)は、治療を継続するために不可欠ですが、証拠があってこそ認められるものなので、注意が必要です。
家事従事者の場合、休業損害(休業補償)は認められないか。
- 具体例
家事従事者(専業主婦)は給与を得ているわけではありません。
しかし、交通事故により、何ら家事ができなくなってしまった際に、休業損害(休業補償)が全く認められないとすれば、それはあまりにも不合理な結果と言わざるを得ません。
家事従事者の休業損害(休業補償)をどのように行うか問題となります。
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対処方法
家事従事者においても、交通事故により家事ができなくなったということを証明することができれば、休業損害(休業補償)を取得することが可能です。
確かに、任意保険会社との交渉段階においては、任意保険会社が休業損害(休業補償)の支払いに応じないことが多いです。しかし、裁判においては、たとえ収入がなくとも休業損害(休業補償)が認められることがあります。
ここで、まず、源泉徴収票等のない中で、どうやって家事従事者の収入額を定めるのか問題となりますが、「賃金センサス」を用いて算出することが一般的です。この「賃金センサス」とは、男女、年齢等に応じた平均賃金の指標となり、この金額を基に家事従事者の収入額を定め、休業損害(休業補償)の算出根拠とします。
次に、どの程度の休業損害(休業補償)が認められるのか問題となります。
この点、入院していたときには、家事をできなかったことは明らかですから、一般的には、休業損害(休業補償)全額が認められることが多いです。(治療のために入院が必要ということを前提としています。)
これに対し、退院をしてから症状固定までの間は、傷病の程度にもよりますが、「家事を全くできない」とまでは認められにくく、裁判上においても、一定の割合で徐々に減額されることが多いです。
それでも、休業損害(休業補償)が一定程度は認められる可能性は十分にありますので、諦めるべきではないでしょう。
個人事業主の休業損害(休業補償)をどのように算定すべきか。
- 具体例
個人事業主の方においては、給与所得者のように、勤務先に「休業損害証明書」を作成してもらうということができません。
また、源泉徴収票等も保有していないことが多いため、個人事業主の方からは、どのように休業損害(休業補償)を算定するべきか、問題となります。
-
対処方法
まず、個人事業主の方は、給与所得者のように、勤務先に「休業」したことを立証してもらうということができません。
もっとも、病院に入通院をしている日については、「休業」していることを合理的に推認することができますので、入通院日数を休業日数とし、この日数に、1日あたりの休業損害(休業補償)の金額を乗ずることで、休業損害(休業補償)額を算出すると良いでしょう。
次に、1日あたりの休業損害(休業補償)の金額についてですが、個人事業主の方は、給与所得者のように源泉徴収票等がないことが一般的です。しかし、確定申告書の控えや、区役所等が発行する課税証明書には年間所得金額が記載されていますので、これを365日で除することにより算出することが合理的です。
その他、交通事故により、前年よりも収入が減少した場合には、その減少の事実も休業損害(休業補償)を請求するための根拠となるでしょう。
もっとも、個人事業主の休業損害(休業補償)の算出方法は個々人のこれまでの稼働状況、治療の経過、売上の減少の程度により変わってきますから、個々の事案に応じた対応が必要です。
休業損害(休業補償)まとめ
休業損害(休業補償)は、不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき、被害者の生活の糧を補償する重要なものです。
もっとも、休業損害(休業補償)を受け取るには、様々な資料(証拠)を集めた上で、個々のご相談者の状況に応じて、主張・立証を尽くさなければなりません。
早期対応が何より重要です。
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